2016年 年頭所感

一般社団法人在日韓国商工会議所
会長 朴 忠 弘

2016年の年頭にあたり、謹んで新年の御挨拶を申し上げます。
また、旧年中は当会議所に格別なご理解・ご支援をいただき厚く御礼申し上げます。

さて、当会議所は昨年12月28日に、韓日両政府が慰安婦問題を決着させることで歴史的な合意を迎えたことを歓迎致します。民団も1月6日に本国の全国紙に「韓日間における慰安婦問題の合意を歓迎する」旨の意見広告を掲載しました。
皆様、これが在日同胞の総意ではないでしょうか。ここ数年来の韓日関係は、この慰安婦問題を巡って大変悪化していたため、私達は生活や事業面で大きな悪影響を受けてきました。光復以来70年の在日の歴史は、民族差別の中で同胞一人一人が、地域社会の隣人や友人との友好関係を深めて、信頼と信用を築いてきた歴史でもありますので、両国の友好関係の発展こそが、在日同胞共有の願いであります。
今後の韓日関係は、グローバル化での競争関係だけでなく、相互補完的に協力関係を強めながら、文化やビジネスでの連携と融合を深めていくことが期待されています。
しかし、両国間には今も領土問題等の難しい問題が火種として残っていますので、今回の合意を土台にして、今後は「政治と経済の分離」を図り、未来志向的に両国の友好関係を深めていかなければなりません。

2016年の日本経済は、年明け以来、中国などの新興国経済の減速懸念から世界的な株価下落の波にのまれていますが、日本銀行によれば、マクロ的には、概ね景気回復傾向が続く状況にあると観測されています。
しかし、これらは大企業中心の回復であり、同胞企業の大部分が占める中小・零細企業を取り巻く、経営環境には依然として大変厳しいものがあります。昨年、12ヵ国で大筋合意をみた環太平洋経済連携協定(TPP)等により、企業は規模の大小に関係なく、今まで以上により厳しい生存競争に直面することになります。経済のグローバル化は社会の大変革であり、在日企業がこの新しいビジネス環境に適応しながら、未来に向かって前進するためには、これまで以上に自社の経営体質と競争力の強化を図らなければなりませんが、一方、在日の経済基盤としての当会議所も環境変化に適切に対応できる組織へと変革しなければなりません。
皆様、当会議所が社団法人化した目的は、まさにこのためであり、今また、当会議所が全国の韓商組織の統合を目指すのも、在日企業をサポートする強固な経済団体を再構築し、在日の経済基盤を強化しなければならないと思うからであります。

ここで、皆様に統合問題の経緯と当会議所の方針についてご説明させていただきます。
「昨年3月27日に民団中央、当会議所、民団韓商連、韓国総領事館が署名して、最終合意書(統合一般社団法人在日韓国商工会議所の出帆に関する最終合意書)を締結、当会議所と民団韓商連の統合が決定されました。
その後、数次の統合準備委員会を開催し、統合定款(案)等を決定した上で、次期会長候補に兪在根氏を推戴、統合総会の開催日を6月3日と定めましたが、5月19日に兪在根氏が統合準備委員会の合意なしに、一方的に統合総会の延期通知を発送、その後7月に入り次期会長候補を辞退しました。
現在はこの兪在根氏の辞退により、統合総会は一時的に中断された状況にあります。兪在根氏の辞退は大変残念なことでしたが、ご本人が固い意思で辞退された今は、再度、最終合意書に従い、新たに次期会長候補の推戴を行い、一日も早く統合総会を開催しなければなりません。
今、この事態を捉えて、関係者の一部から、韓商連統合に反対する意見があるようですが、それは最終合意書に違反する行為であり、その上、事態をより一層混乱に落としいれることになります。公館をまじえ、過去4年に及ぶ事態解決への多くの努力の結果、合意し、署名された最終合意書は最高意思であり、誰も反故にできません。
そして、最終合意書の7項には民団韓商及び法人韓商が、この合意事項に違反した場合、その当該団体は「大使館が行ういかなる厳しい制裁処置も甘受する。その場合、大使館は当該団体と一切の関係を持たない。」旨が制裁措置として明記されています。

ところで、最近、ある民族紙に「破られた4・14合意」との見出しで、当会議所に関連する記事が掲載され、これに関して各方面から問合せがありますので、この点について説明させていただきます。
記事内容の概略は「15年4月統合韓商連の会長の就任を要請され兪氏は、、、(中略)、要望項目を出し、(同4月14日に)参加者全員の同意を得た上で韓商連会長就任の要請を受託した。
しかし、一社韓商連側から後日、要望項目を含む全会一致で合意したはずの4・14合意内容を否定する動きが見られた。これにより統合作業は大きくつまずいた。」となっています。
この記事には、肝心な「要望項目」の内容が記載されていません。兪氏のこの4・14要望には、「統合韓商連の理事は韓国籍者とする。(但し、現役地方韓商会長は例外とする。)」との事項があり、日本国籍同胞を役員から除外する旨の要望がありました。
当会議所は理事会を開催し、重要事項案件として、この要望の受託の是非について審議したところ、「日本国籍取得者を理事から除外することは、定款の規定からも、また商工会議所活動の目的からも認めることはできない。」との決議が行われ、これを兪次期会長候補側に返答しました。これが「破られた4・14合意」の内容であります。
もとより、一般社団法人に関する法律及び商工会議所法には、構成メンバーはもちろん、役員についても国籍条項がありません。当会議所の定款もそれに準拠するものです。商工会議所の活動は国籍を超えて広く行うのが本旨です。
従って、国籍条項をもうける発想そのものが間違いであり、またグローバル化時代にも適合しないことは明らかです。

今、世界には700万人を超える在外同胞の多くが、居住国の国籍を取得しながらも、各地でコリアン社会を形成し活躍しています。
在日社会も年々、日本国籍取得同胞が増え、本国からニューカマー同胞がどんどん入り、特別永住権を持つ韓国籍同胞はますます減少傾向にあります。
言うまでもなく、統合韓商連は在日商工人の経済的な発展に寄与することを目的とする組織でありますので、在日同胞であれば国籍に関係なく会員資格があり、会員であれば、役員になることは妨げられません。
これからの在日社会は韓国国籍での連帯から、国籍に関係なく民族意識で連帯し、構成される社会に変化することは、誰も止めることのできない時代の流れではないでしょうか。「新しい酒は新しい革袋に盛れ」という諺がありますが、韓商連組織が時代に適応し社会的な責務を果し続けるためには、それにふさわしい新しい組織のあり方が必要であり、これこそが統合韓商連に求められている役割であります。
当会議所は昨年12月16日に理事会を開催、「最終合意書に則り、早期に統合総会を開催する。」との方針を再確認し、同25日に、大使館に対し、新しい次期会長候補を推戴し、早期に統合総会を開催することを要請しました。
一方、民団中央は、「民団韓商連は昨年5月に解散総会を行い、洪采植会長以下の執行部全員が辞任したので、今の韓商連は民団中央の預かり状態(実質的には直轄状態)にあり、調整が必要な状況にあるので、統合作業については今暫く時間的な猶予をいただきたい。」との見解を表明しています。しかし、今のところ猶予する特段の理由もありません。早急に新たな次期会長候補を推戴した上で、統合総会を開催し、事態を正常化すべきです。
また、柳興洙大使も新年メッセージで、「同胞社会の構造変化と多元化が急速に進んでいることに触れ、民団が時代の変化に能動的に対処しながら、在日社会を融合・発展させていくことが重要です。」また「在日同胞社会がさらに互いを助け合いながら、新たな挑戦と課題を克服し、より高く飛躍していかなければなりません。」等と語られています。
皆様、統合韓商連の出帆が、在日社会の融合・発展につながる道であり、在日同胞の権益を守り・伸張させて行くための第一歩になるのではないでしょうか。当会議所は、早期の統合に向かって、より一層、尽力することをお約束いたしますので、引続き皆様のご理解とご支援をお願申し上げます。

終りに、皆様のご多幸と御事業の発展を心からお祈り申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。

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