百貨店業界4位の三越と5位の伊勢丹は23日、取締役会を開いて来年4月の持ち株会社方式による統合を正式に決める。大丸と松坂屋ホールディングス(HD)、阪急百貨店と阪神百貨店に続く、業界では今年三つ目の大型統合だ。「三越伊勢丹」は規模と競争力をそなえた最強の百貨店を目指すが、人口減で市場が縮小する中、専門店などの台頭で小売業態のすみ分けも崩れ、業界を超えた大競争時代に入っている。
売上高で1兆5000億円を超える新統合会社は「三越伊勢丹HD(仮称)」。本社は三越店舗に近い東京・銀座、取締役は同じ3人ずつ。「国内初の百貨店」の伝統を誇り、売上高で上回る三越に配慮して、表面上は「対等」を演出する。
しかし伊勢丹は「名を捨てて実を取ることが重要」(幹部)。最高経営責任者(CEO)は武藤信一・伊勢丹社長が務め、株価や収益力など現在の実力で格段に上の伊勢丹が、統合の主導権をがっちり握る。業績低迷で買収のうわさが絶えず、伊勢丹に救済を求めざるを得なかった三越は、もはやその流れに逆らうことはできなかった。
ゴルフ場開発などバブル期の過剰投資が重荷となった三越。横浜店や大阪店を閉鎖するなどリストラを行ったが、依然、低収益体質から脱却できていない。本業への必要な投資がおろそかになり、多様化する顧客志向にあわせた改革に乗り遅れてしまった。
一方、伊勢丹は、平日でも開店前になると新宿本店前に人だかりが出来る人気ぶり。客の年齢や買い上げ金額などに基づいてどんな商品が売れるかを分析し、サイズや色ごとに発注や在庫を細かく把握する独自システムを駆使する。顧客ニーズを的確につかむ「最強の百貨店」とも言われる。
だが、最強であり続けるには、改装や新規出店、システム投資に膨大な投資が継続的に必要になる。 規模を確保しないと売れ筋商品も人気ブランドも集められない時代が見込まれるなか、伊勢丹の連結売上高は8000億円弱。伊勢丹にとって、統合は飛躍に向けた大きな賭けでもある。